青さと若さと過ちと


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場・喫茶店


春樹「はぁ〜」

旭日「どうした?入ってくるなり」

春樹「店長ぉ……」

旭日「元気ねぇな〜」

春樹「店長は俺と柊木が付き合ってるの知ってるだろ?」

旭日「ああ、あのお前にはもったいないくらいの優しい子な」

春樹「店長ぉ……」

旭日「はは、それで?なんかあったのか?」

春樹「それが……」


回想 場・学校 教室


春樹「あ〜あ、やっと学校終わった〜」

直人「終わったっつってもお前授業一つも聞いてねぇじゃねぇか」

春樹「うわ、ひど、そういうこと言うんだ」

直人「ひどいっていうか、事実だろうが」
  「授業一切聞かずに寝てるくせに」

春樹「だって眠いだろ〜」

直人「留年しても知らんぞ」

春樹「平気平気、なんだかんだで留年なんかしねぇって」

直人「あっそ」

春樹「それよりさ――」


 ガラッ


祐二「なあなあなあ、橘って柊木と付き合ってるって本当か!?」

春樹「え?」

祐二「いやさ、なんか噂で聞いたんだけどさ」

直人「噂?」

祐二「そうそう、噂」
    「なんだ?伏見も気になるのか?」

直人「いや、そうじゃないが、その噂ってのがどんなものかと思ってな」

祐二「結局気になるんだろ?いいさいいさ、話してやるとも」

春樹「ちょ……」

祐二「聞いた話なんだけどな」
  「先週の日曜、2人がデートしてるのを見たってやつがいるんだ」

直人「先週の日曜?」

祐二「なんでも手繋いで歩いてたんだと」
  「んで、これはもう付き合ってるに違いないってことで俺が聞きにきたってわけ」

春樹「最悪だ……」

祐二「ん?なんか言ったか?」

春樹「いや、何も言ってない……」

祐二「そうか、じゃあ改めて聞くけど本当なのか?」

春樹「付き合ってねぇよ」

祐二「本当に?」

直人「本当だよ、先週の日曜ならこいつは俺とずっと一緒だったぞ?」

祐二「そうなのか?」

直人「ああ」

祐二「なんだよ、デマかよ〜、せっかく面白い話が聞けると思ったのに」

直人「悪かったな」

祐二「ちぇ」
  「まあいいや、じゃあまたな、面白い話あったら聞かせてくれ」


 ガラッ


春樹「ふぅ〜……、直人サンキューな」

直人「別に、知られんのいやなんだろ」

春樹「ああ」
  「本当に助かった」

直人「知られても変わらないと思うがな」

春樹「そうなんだけどさ〜なんていうか……」


 ガラッ


祐二「なあなあ」

春樹「うおっ!」

祐二「本当に、付き合ってないのか?」

春樹「付き合ってねぇよ」

祐二「本当か?」

春樹「どんだけ疑うんだよ、付き合ってねぇ!」

祐二「ふ〜ん……そうか」

春樹「だいたい俺と柊木?ありえねぇよ」
  「なんで俺が柊木と付き合わなきゃなんねんだよ」

祐二「わ、わかったよ、悪かったって」

春樹「たくっ」

祐二「じゃ、じゃあまたな」


 ガラッ


春樹「はぁ……」

直人「春樹」

春樹「え?」

直人「後ろ」

春樹「後ろ?」

奈緒「……」

春樹「柊木……今の聞いてた?」

奈緒「えっと……いや、あはは……」

春樹「悪い、そういう意味じゃなくて、なんていうか、その……」

奈緒「い、いいの、ご、ごめんね」


 ダッ


春樹「ひ、柊木!」

直人「ごまかすためとはいえ、言いすぎだな」


回想終了


春樹「てなことがあって……」

旭日「あ〜あ」

春樹「嫌われたかなぁ……」

旭日「そうだな、もしかしたら嫌われてるかもしれねぇな」

春樹「やっぱり……」

旭日「でも、嫌われてねぇかもしれねぇ」

春樹「そうかな?」

旭日「さあ?それはわからん」

春樹「そんな……」

旭日「当たり前だ、そんなもん俺が知るわけねぇだろ」
  「その柊木って子は、俺の彼女じゃなくてお前の彼女なんだからよ」

春樹「あ……」

旭日「まあ、お前がどうするか、だな」

春樹「俺がどうするか……」

旭日「そ、お前次第で、どうにでもなるさ」

春樹「俺次第……あ、あのさ、俺に菓子の作り方教えてくれ」
  「喫茶店の店長なら作ったりもするしわかるだろ?教えてくれよ」

旭日「いいけど……なんでまた急に」

春樹「柊木、ケーキとか菓子好きだから……」

旭日「そうか、よし、じゃあちょっと待ってろ」
  「店終わったら、作り方教えてやるから」

春樹「わかった」