リトス・ホプリスマ
〜世界を護る聖石〜
1
広く穏やかな世界―ネフリティス―
3つの大陸を中心に広がり海は穏やかで海産物も豊富にとれ、土壌は豊かで作物も枯れず、争いもなく人々が平和に暮らす世界。
この世界がこれほど恵まれ豊かに暮らせるにはある理由がある。
場所は、この世界共通で唯一の信仰すべき宗教である、リトス教の根拠地でもある大聖堂。
「どうするというのです! 事の重大さがあなたはわかっているのですか!」
「ぐっ」
「リトス教の象徴とも言える、聖石、リトス・ホプリスマが台座から失われたのですよ!」
「わかっている、わかっているからこそ、こうして主教である私たちが集まっているのだろう!」
翡翠色の祭服に包まれた2人の男が焦りを隠しきれずに、口論をしている。
1人は幾分若めの男で、焦りに染まりつつも言葉遣いに気をつけているようだ。
もう1人は、恰幅のいい壮年の男で、常に威圧しているような風格を漂わせている。
「2人とも、少し落ち着いてはどうですか?」
と、奥から細身で柔和な雰囲気の老年の男が出てくる。
男は2人よりも幾分豪奢で少し作りの違う翡翠色の祭服を着ている。
「口論をしていても、何にもなりませんよ」
「だ、大主教様」
「申し訳ありません」
大主教と呼ばれた、男が2人に諭す。
「核といくつかは残っているのですから、今すぐ全世界に影響が及ぶわけではありませんよ」
「そ、そうですか」
「それならば」
大主教の言葉に2人の主教は幾分か落ち着きを取り戻す。
「ええ、かといって悠長に構えていられる状況ではないですがね」
「大主教、そもそも何故リトス・ホプリスマが台座から失われたのですか?」
先ほどより幾分か気を落ち着かせた若い主教が大主教に聞く。
冷静になって、根本的な疑問に気づいたようだ。
「それを話すのは構わないのですが、そろそろ他の主教方も来るでしょうから、それからにしましょうか」